革なめし工場報告(最終章)

革なめし工場見学(その1)

革なめし工場見学(その2)

革なめし工場見学(その3)

と、ご紹介してきましたが、今回で最終章となります。

今回は山口産業さんが取り組んでいらっしゃる「マタギプロジェクト」について。


※生皮画像ありますので、苦手な方は閲覧注意でございます。



山口産業さんのお話から抜粋~~~


今、当社では豚の皮を減らした分、ドラムのキャパが空いてるんですね。

その空いてるキャパを使って、今、全国からイノシシや鹿の皮を豚の皮と一緒に鞣すということを2008年からスタートしています。


ご存知のように、日本中で田畑を荒らしてしまう被害が増えていて、若干生態系のバランスが崩れてしまって、イノシシや鹿が沢山繁殖しているようです。


2008年に北海道のエゾシカの組合の方と、島根県の美郷町ってあるんですけども、そちらの役場の方が、それぞれ鹿の皮と、イノシシの皮を鞣してくれないかってことでご依頼が有りまして、じゃあ鞣してみようかって事で豚の皮と一緒に入れたら、思いの外きれいになったものですから、返してあげたらすごく喜んでくれて、


だったらこれを少し、皆さんに言われたら、加工賃だけでやらせてもらおうかなという事で取り組み始めたのが、「マタギプロジェクト」といいますけども、まぁ、アレやコレやずーっとやってきて、野を越え山越え、Wi-Fi繋がらないような山の中でも噂が自然と広まって、今、212箇所の産地さんとキャッチボールをするようになりました。

当社では鞣し工賃だけで、この革は一切、販売をしておりません。


沢山、頂戴よっていうお声を頂くんですけども、あくまでも産地の皆さんに返すことによって、新しい有効資源にして、そこで、収益事業にしていただこうというのがマタギプロジェクトの趣旨ですので、まぁ、本当に大手の百貨店さんとかからも、ブランドさんとかからもお声がかかるんですけども、今までお断りしてきてしまったのが現状です。


これで十数カ所くらいの産地さんからの分なんです。

こういう、革のハギ方の講習会も5月にやるんですけれども、そういった部分も含めてマタギプロジェクトっていうのをやってきましたけれども、革が良くなれば良くなるだけ、欲しいって方も増えますし、じゃあ、この産地に返した革を猟師さんがアパレルさんに売れますか?っていうと、とてもじゃないけど売ることが出来ない。


そういうネットワークも情報もないし、もともと顔見知りでもないしということで、そういう電話を毎回私が繋ぐわけにもいかないので、その後、レザーサーカスという組織を経済産業省が応援してくれて作りました。そこで、この革を買っていただくというネットワークづくりをしようということになりました。



産地からこうやって、塩を振っていただいたり、冷凍であったり、冷蔵であったりとかですね、中には生のまま、腐っちゃうぞーって言うんですけども、毎回送ってみえる産地さんもいらっしゃって、その辺りをですね、皆様に、何度もご注意申し上げたりするんですけども、原料が悪いと最後までいい革にならないんですね。


必ず一枚一枚検品をして、当社の方で塩を振ります。


そうすると、だいたいこの状態で、今の季節だったら一ヶ月は十分腐らないんですね。この状態にして、次に仕込む時まで保管して、鞣していくっていう工程になります。


もちろん鹿の皮ですと毛皮にして欲しいってお客様もいらっしゃるんですけども、当社では毛皮を作る工程が無いので作れないということです。


それから、この量になってきますと、これも経験で学んだことなんですけども、豚で500枚入るとこで300枚で、そこにこの分を入れても全然容量的には大丈夫なんですが、

どうしてもジアブラとか、それから産地毎に色々条件違うんですね。血が滲んでしまってる肉が合ったりですとか、色んな条件があるので、豚の革にちょっと影響が出てしまっているのが現状なものですから、100枚位たまるまで待って、イノシシ、鹿だけで仕込むようにしています。


豚の革もですね、有名なカバンのブランドさんとか、レディースのブランドさんですとか、時計バンドとか、そういうものに使われているものですから、どうしても品質が落ちてしまうのは厳しいものですから、イノシシ、鹿だけで仕込んでいます。


豚と一緒に仕込むことで、まぁ、私も正直経営者ですので、そろばん弾くとああ、これは十分、加工賃だけでもやっていけるなという計算だったんですけれども、今、これだけで仕込むと税理士にもこの先どうするんですかという事も言われてしまうんですが、もう、乗っかかった舟ですので、このまま続けていきたいと思っています。


ここにぷらーんとぶら下がっている機械があるんですけども、今うちで一番新しい機械がこれです。

これで、何をしたいかっていうと、スクリューが付いていて、まるく刃物が回るようになっていて、5月にやるイノシシ、鹿の脂取り講習会の時に活躍するのですが、これが脂を取る機械になります。


イノシシ、鹿の脂が残ってしまっていると、さっきもお話したとおり、革が良くあがらないので、猟師さんにいくら言ってもなかなか取ってくださらないというので、これ導入しまして、

アメリカ製らしいんですけども、80数万するんですよ。


ほとんど元取れないなぁっていうことをやってるんですけども、まぁ、これが入ってくれたおかげで、我々も脂を取って鞣すことが出来て、すごく風合いのいいイノシシ、鹿の革の上がりになったので、嬉しい機械かなと思っています。


↓イノシシと鹿の革です。

どうですか御覧頂いて、手前の方、ちょっときついでしょう?

きついんですけど、これ申し訳ないけど、一番手前にあるのがハギレみたいに切れちゃってますよね。ああいうのも全部拾い集めて、絞って、ちゃんと素材にして返すんです。


ハギレになっちゃってますけど、二枚で一枚分って事で、鞣し加工賃を他の革と同じ金額で頂戴しています。こういう風になっちゃうので、なるべくいい皮で送ってくださいね、原料の段階できちんと処理をして頂ければ、こうはなりませんよってことです。


マタギプロジェクトでは10色から選んで頂いて染めています。染める段階まで枚数が貯まるまで保管する為、ドライアップをしているところです。


こちらはエゾジカの革です。

こちらはイノシシの子供、ウリ坊の革になります。

エゾジカとニホンジカの違いは先ずこの繊維の大きさが違います。

エゾジカの方がシボが大きいです。

ニホンジカの方がもっと細かくてスムースな革の表面となります。


こちらはイノシシの革で黄色に染めたもの。

鹿の革。

この鹿の革と同じ革を使ったサッカーボール。

埼玉県の美里町にオーストリッチ牧場ってあるんですけども、そこで毎月16羽ダチョウの皮をお肉と脂にしてまして、皮はなかなか使えないってことで、でも勿体無いということで鞣しましょうと言うことで鞣してこれも返しています。

北海道の羊。

青森県の馬、牛、それから熊ですね。岩手県岩泉町の熊ですね。去年台風で大変だったんですけども、今、岩手県岩泉では、山葡萄作家さんがその熊の革を染めて、岩手県知事賞か何かを貰ってですね、こないだも喜びの報告を頂いたんですけれども、こんな形で、当社では山羊も鞣しを依頼されてやってます。

革にいくつも穴が空いているのは、殆どが皮を剥ぐ時のナイフの傷です。

ですから、当社では何度も産地さんに呼んでもらって猟師さん向けの講習会なんかもやらせてもらっています。

鹿革を使用したボトルケース。

鹿革の穴を活かしたランプカバー

鹿革と真田紐を使用した岡山のIDカードケース



この日、張り切りすぎて、ちょっと早めに着いた私達。工場見学が始まる前に、従業員の方が届いた皮をチェックして塩をまぶすという作業を見ることができました。


そりゃもうどっこらしょと塩をまぶしていました。


さて、天竜のイノシシ、鹿でどうやって何をするのか。なんとなくなんとかなりそうな何かが見えてきたぞ。レザーサーカス的な動きがSpiralなら出来るのではないかな?と思うのです。

ゆっくり急いで一歩づつですけどね、どうにか形にしたいと思います。


天竜って、意外と害獣駆除の数が多くは無いって事がわかりました。それから害獣駆除したお肉食べちゃいけないルールが天竜にあることも知りました。

これはたまたま別件でお尋ねした「秘密村」(龍山のキャンプ場です。)の村長さんに伺った話しなんですが。。。

ホントにそんなつもりじゃなく、今年の夏のキャンプにどうかなーって下見をしに行った「秘密村」の村長さんが鹿革鞣しをされていて、山口産業さんとも長いおつきあいだったりなんかしてっていう、なんだか、偶然のような必然のような(笑)びっくりすることもあったんです。


天竜のイノシシ、鹿に関わる人、みんなが楽しくなるような。

そういう流れを作れたらいいよなぁと。思います。


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